翌日、早めに学校に着いた夏菜子はそわそわしていた。


 自分の行動や言動で、ありもしない噂を流されてしまうのではないかと不安だったのだ。


「おはよう夏菜子、今日は早いんだね」




「―――――――!?」




 考え込んでうつむいていた時に、藍に話しかけられて心臓が飛び出るかと思った。


 そして、普段通りに近付いてきて耳にキスをしようとする藍。


「ちょ、ちょっと待って、今日は、今日は駄目だから!」


 藍の肩を両手で抑えて、近付かせないようにする夏菜子。



「どうして? 昨日と変わらないよ?

 今日も夏菜子は可愛いよ」



 優しく夏菜子の手を肩から離して再び近付いてくる藍。


「だめ! 駄目なの、今日は本当に駄目なの!」


 うつむいて藍のキスから逃れようとする夏菜子。


「―――もしかして、彼女から何か言われたの?」

 彩のことだ。

 直感して表情が硬直してしまう。


「同じことを藍くんにも伝えたって言ってた……怖いよ……」

「きっと本気じゃないよ、大丈夫さ」