「何だか帰るのが久しぶりで、ちょっとみんなに会うの恥ずかしいなぁ……」

十年以上暮らしている森の中を歩きながら、ルーチェ・クロウディアは呟く。頭上を鳥が鳴き声を上げながら飛んでいくのを見た後、彼は再び歩き始めた。

交通事故で命を落とし、この世界に転生したルーチェは魔王に拾われ、そのまま側近として過ごしている。しかし、今は魔王であるクラル・ディスペアの命令で冒険者育成学校に通っているところだ。

冒険者育成学校は全寮制であり、生徒たちは長期休みでない限り家に帰ることはできない。今日から長期休みに入ったため、ルーチェは自身の家であるクラルの屋敷に向かっている途中だ。

「あの二人も遊びに来てくれるって言ってたし、楽しみだな!」

ルーチェは友人である剣術士のアーサー・ウィリアムズと、司祭のティム・ラファールの顔を浮かべる。二人は実は前世からの友達なのだが、そのことはクラルには秘密にしている。