「待てーーーーーーーー!」 男の人がすごく怖い顔で誰かを追い掛けています。
前のほうを見ると女の人が財布を持ったまま走っていくのが見えますね。
何をしたんでしょうか?
 男の人はパン屋さんの所にまで来ると女の人を見失ってしまったようです。
「どうしたんだね?」 「女に財布を盗まれたんだよ。」
「そりゃあ大変だ。」 話を聞いたおじいさんも女の人を探そうとしますが、何処まで行ってしまったのか見当も付きません。
「困ったなあ、、、これじゃあどうしようもないぞ。」 集まってきた男の人たちは途方に暮れてしまいました。
すると、パン屋さんの扉が開いて、、、。

 「なんかいい匂いがするが、これは何だ?」 中を覗いてみるとテーブルの上に美味しそうな飲み物が置いてあります。
「おじさんたち、のどが渇いてるでしょう? これを飲むといいよ。」 月音君がジュースを勧めてくれました。
「そうだな、、、のども乾いてるし飲もうか。」 おじさんたちはジュースを貰うと椅子に座って飲み始めました。
 あれあれ? さっきまで怖い顔をしていたおじさんが考え事をしていますよ。
「どうしたんだ?」 「さっきの女なんだが、、、。」
「女がどうしたね?」 「おそらくは仕事も無くて大変なんだろうよ。 今回だけは許してやろうと思う。」
「ほんとにそれでいいのかい?」 「ぼくらだって苦しい時には助けてもらったんだ。 財布の中には多くは入ってないが、それで助かるならそれでいいんじゃないか?」
男の人は静かに笑っていました。 そこへ奥からおじさんが出てきました。
「そりゃあ、財布を盗んだ人は悪いよ。 でもね、この町はみんなで助け合ってここまでやってきたんだ。
おてんとさんは必ず見てるんだよ。 いつまでも逃げ回ることは出来ないよ。」
「そうだよね。」
 ぼくらも誰かが苦しんでいたらそっと助けてやろう。
月音君はおじさんたちを見てニコッと微笑みました。