夜になりました。 パン屋さんはまだまだ営業中です。
この辺りでは7時を過ぎると男の子たちがやってきて、集団で喧嘩したり騒いだりするから大変なんです。
今夜も同じように集団で男の子たちがやってきました。
「やっちまえ!」 一人の男の子が命令します。
すると待ち構えていた男の子たちに向かって集団が飛び掛かっていきました。
今夜も派手で激しい喧嘩の始まりです。

 しばらくするとワートカキャーとかドンとか、いろんな声や音が聞こえてきました。
そのうちにお巡りさんたちまでやってきて総出で殴り合いが始まってしまいました。
 それからしばらく過ぎたころ、何人かの男の子が集団から放り出されて、パン屋さんの前まで逃げてきました。
「なんだか、いい匂いがするね。」 一人の男の子が扉を開けると、、、。
中からメロンパンが焼ける甘い匂いがしてきました。
グーっとお腹が鳴った男の子は空腹に耐えきれなくて中へ飛び込んでいきました。
 「いらっしゃあい。 いらっしゃあい。 お待ちしてましたよ。」 シロクマのようなおじさんが奥から出てきました。
「さあさあどうぞ。 好きな物を好きなだけ食べていいよ。」 月音君がテーブルを指差しています。
メロンパン クリームパン クロワッサンにサンドイッチ、、、どれもこれも美味しそう。
男の子は我慢できなくなって友達にもパンを勧めました。
「美味しいじゃん。」
友達は有りっ丈のパンを抱えて喧嘩している男の子たちの所へ、、、。

 しばらくすると男の子たちがやってきて口々に「ありがとうございました。」って言うんです。
お巡りさんが不思議そうな顔でおじさんに聞きました。
 「ここのパンを食べたらみんな仲良くなったんですけどどうしてですか?」
それを聞いた月音君は言いました。
「嫌なことを忘れてしまうパンなんです。」
 それまで男の子たちは何か有ると喧嘩していたはずなのに、それ以来喧嘩しなくなったんだって。