その日の放課後、今度はけんかしている二人の男の子がパン屋さんの前を通りかかりました。
「ねえねえ、なんかいい匂いがしないかい?」 「そうだねえ。」
二人はけんかしていることも忘れて匂いのもとをさがして回りました。
 すると、、、昨日と同じようにまたパン屋さんのドアが開きました。
「ここだよ。」 「そうだ。 ここだ。」
男の子たちは先を争って中へ入っていきました。

 昨日と同じように大きなテーブルの上にたくさんのパンやスイーツが並んでいます。
「おいしそうだなあ。 これ食べたいなあ。」 黄色いランドセルをせおった男の子が蜂蜜がいっぱい掛かったケーキを取り上げました。
「おー、いらっしゃい。 ケーキが食べたいのかなあ?」
店の奥からやさしそうなおじさんが出てきて二人に声をかけました。
 (これ、食べたい。) 「ああいいよ。 でもね、食べる前におじさんと約束してくれるかな?」
「なあに?」 その男の子が聞きました。
 「君さ、そのお友達を叩いたり蹴飛ばしたりして虐めてたよね? 虐めっ子には食べてほしくないんだなあ。)
男の子は少し考えてからおじさんに言いました。
「ぼく、これからは友達を叩いたり蹴ったりしない。 仲良くするよ。) 「約束できるかな?」
「うん。」 「じゃあさあ、おじさんの前で友達にあやまろう。)
「ごめんなさい!」 ランドセルが引っ繰り返るくらいに深々と謝ったものだからおじさんも友達も大笑いしてしまいました。
「このケーキはみんなを仲良くさせてしまう不思議なケーキなんだ。 二人で仲良く食べるんだよ。) 「はーい。」
二人がレジへ行くと、、、。 「君たちが仲良くなってくれたらお金は要らないよ。)
「でも、、、。」 「ぼくは月音。 君たちが仲良くなるように見守ってるからね。)
 お店を出てきた男の子たちは楽しそうにかけっこをしながら家まで帰っていきました。