由里はチクリと痛んだ心に気づかないふりをして、とりあえず玄関でパンプスを脱ぐ。


——ん?玄関、なんかきれいになってない??


最近忙しかったせいで、玄関口の掃き掃除をサボっていたが、今はなぜかゴミ1つ落ちていない。


そう言えば、リビングへ続く廊下もツヤがあり、やたら照明の光を反射しているように見える。


リビングのドアを開け、電気を点けると、アキラの頭がソファから突き出ていることに気づいた。


——いたんだ。


なぜかホッとしている自分がいた。


そして、朝出たときよりも明らかに片付いている部屋を見て、驚いた。


——もしかして、掃除してくれた?


ここしばらく忙しくて掃除が手につかず、床に自分の髪の毛があることも見て見ぬふりをしていたのだが、今朝まであったはずの髪の毛達は一本も落ちていない。


更に、机の上に散らかっていたものは綺麗に並べられ、埋め立てられていたはずの机上スペースが確保されていた。