「結。なんで、最近うちにあんまし遊びに来ないの?」

 かっちゃんに学校の廊下で話しかけられたの。
 かっちゃんは体育の授業が終わって教室に戻るところみたいだ。
 学校の廊下で、いまは休み時間。

「えっ。だってクラブ活動も委員会もあるし」

 ドキンとした。
 かっちゃんはもうわたしより背が高くなってるんだ。
 わたしがかっちゃんを見上げてる。

「お姉ちゃんは早く帰ってくんのに、結《ゆい》は遅いの?」

 周りの人の目線が気になる。

「えっと……。あっ、あのね、かっちゃん。今日は早いよ」
「結。じゃあ今日はさ、俺と帰ろう?」
「あれ? 圭ちゃんは?」

 圭ちゃんとは今年はクラスが違う。

「あー、お姉ちゃんは今日は歯医者でお母さんとさっき帰ってった」
「ああ、そうなんだ」

 無邪気に笑うかっちゃんは、きっとわたしが君のことをこんなに好きなことを知らない。

 ドキドキなんていつからしてるんだろう。

 わたし、前はかっちゃんにドキドキしてたかな?

「かっちゃん。あの」
「なに? 結?」

 一コ年上なのに、わたしはかっちゃんに「結《ゆい》」って呼ばれてるのが嬉しい。
 もうずっと呼ばれてるのに。

「昇降口で待ってて」
「うん。待ってる」

 次の授業の鐘がなる。
 かっちゃんは慌てて教室に戻って行った。
(なに話そうかな?)
 前はそんなこと考えてなかったのに。
 わたしも慌てて教室に戻った。