「「は?!」」


魔族の価値観を共有できない会話は最終的に「は?」の応酬で終了する。

アホのエリアーナも賢者サイラスも、魔王様が人間に抱いた恋心など理解できなかった。



「エリアーナ、生贄姫付きのメイドの任も解く。もっと適任が他にいるからね」

「えぇー!メイド服、気に入ってたのにぃ!」



メイド服可愛いでしょとスカートの端を摘まみ上げてアピールするエリアーナに、ジンは尖った耳をピクリとも動かさない。



「可愛いから着てていい。僕が許可する」

「ほんま?!だから先生って大好きや!」



サイラスはふふと微笑んで見せるが、尾てい骨が疼いた。メイド服効果は抜群だ。ジンは二人のやりとりを無視して次の話題に移る。


「ベアトリスからロッドがなくなったと聞いた。ロッドを盗ったのはエリアーナかい?」



ベアトリスを泣かせようと嫌がらせを絶え間なく続けているのは、エリアーナとワニおじさんだけと報告が上がっている。


ワニおじさんなんて、魔王ジンにまで直々にあの人間はいつ帰るのかと聞きに来る粘着さだ。