執務椅子に座ったジンの膝の上に、泣き疲れたベアトリスがすやすやと眠っている。


冷たい亡骸を大事に抱きしめて眠るベアトリスをジンが抱き寄せた。ジンのみぞおちには、誤魔化すことのできない慈しみと愛しさが宿っていた。


「ベアトリス、愛しい……我が妻」


ジンは幼くか弱いベアトリスを抱きしめる度に腹に生まれるゾクゾクに


「愛」と名前を与えることにした。


そんな名前のものが魔王に宿るなんて、ジンにも信じられなかった。しかも相手はまだ生まれて間もない人間だ。


だが、この感情に、他に名前が見当たらなかった。


魔王は愚かにも、種族を越えて人間を愛してしまったのだ。