「ニャ」


アイニャの声にベアトリスが目を覚ますと、視界にはうさぎ耳が垂れていた。


「え?!ウサギ?!」


ベアトリスが予想外の出来事に警戒して身を竦めると、バシンッと大きな音が鳴った。


「痛ッ!」


聞き慣れない女の子の高い声が響いて、ベアトリスは慌ててベッドの上でアイニャを抱いて座った。


「ものすっごい弾かれたやん。さっすが初代魔王様の加護はハンパやないなぁ」


初代魔王様の加護にはじき返され、赤く腫れてしまった右手を擦った女の子は変わったイントネーションで話しだした。

女の子はピンクの長い髪を高く二つ括りにして、9割方は可愛い人間の容姿をしている。だがなんと頭の上には「うさぎ耳」が生えていた。


ぴくぴく動くうさ耳は本物だ。

魔族の形態は同じものが二つといないと言えるほど多様である。

彼女はピンク髪ツインテールにうさ耳を生やし、メイド服を着ていた。


「あ、あなたは?」

「うちはエリアーナ。生意気生贄姫のメイドや。不本意ながらな!」


木のベッドの上で壁際に追いつめられているベアトリスの顔の横に、エリアーナが細い手を置いて迫って来る。うさ耳メイドの壁ドンだ。