魔王様ジンと「仲良く」しませんかと提案してから3ヶ月が過ぎていた。予想に反してジンはベアトリスと本当に仲良くしてくれている。


魔族には必須らしい肌の触れ合いは時折手を繋ぐにとどめ、夜のお茶会で楽しくお喋りを続けていた。



さらに、ジンはベアトリスに清潔で広い部屋を与えてくれた。ベッドはふかふか。しかもなんと、念願の風呂付個室である。食事も提供されるようになり、各段に暮らしの質が向上していた。



ベアトリスは純粋に魔王様と仲良くなりたかっただけだが、幸運な副次効果である。



「アイニャー?お風呂入るけど、一緒に入る?」

「ニャ」


アイニャはプイッとそっぽを向いてイヤイヤした。ベアトリス大好きで従順なアイニャとあれど、水浴びは苦手だった。


ベアトリスはそんなプイッとした仕草のアイニャも愛しくて、一糸まとわぬ姿でアイニャの頭をよしよし撫でた。


「じゃあいい子で待っててね。お風呂入って来るわ」

「ニャ」


アイニャのいってらっしゃいを受けて、お風呂の扉が閉まるまでずっとベアトリスはアイニャに小さく手を振り続けた。


お風呂に入るだけなのに大層な別れである。これがベアトリスとアイニャの通常だ。