「アイニャ?どこ?」


ベアトリスは軽くなった下着姿で、人間国から連れて来た愛猫のアイニャを呼んだ。


質素な木のベッドの下を覗き込むと、金色の目で漆黒の毛並みのアイニャがニャッと首を傾げる。


外で見せていたキリリと生意気一辺倒で強がった態度を一変させたベアトリスは、アイニャを抱っこして顔をふにゃふにゃに緩ませた。


「アイニャただいまにゃー」


にゃん語が自然と漏れ出る。

アイニャも嫌がることなくベアトリスに抱かれて、すり寄せられる頬に頬をすり寄せ返す。


「あーん、アイニャ可愛いにゃー大好きだにゃー」

「ニャ」


アイニャも満足そうに頷き、ベアトリス頬を一度ペロリと舐めた。いちゃいちゃしながら二人は固いベッドに倒れ込む。


ベアトリスはアイニャを腹の上に乗せて、薄暗い石造りの天井を見上げた。お腹に乗る命の重みがベアトリスの唯一の生きがいだ。


「アイニャと一緒に魔国に来れて良かったわ」


人間国を離れる時に、アイニャを見た魔国のお迎えは「使い魔」は許可すると言った。


魔国には動物を飼うペットの概念がないようだ。だが、アイニャは使い魔認定を受けて無事に一緒に魔国に来ることができた。


アイニャがいなければ、ベアトリスはすぐに目を傷めつけて強制的に涙を流して「実家に帰らせて頂きます!」を発動するところだった。


たとえ、エロ伯爵の性奴隷となったとしても、アイニャだけは手放せない。