「その仲良くとは、触りたいとかそういう意味ではなくて」

「魔族は触れあいから仲良くが始まるんだが?」



魔族の恋愛など千差万別であり、超個人的見解の元に行われるものである。

だが、頭の回る側の魔族であるジンは全ての魔族がそうであるように語って、ベアトリスの柔温かい肌の手を握り続けた。




「そ、そうなのですか?勉強不足で申し訳ございません」

「これから学んで行けばいい。私が教えよう」

「はい、精進いたします」



人間特有の薄過ぎるか弱い肌に、ジンの冷たい肌が擦り寄りたがっていた。


人間に興味などなく、すぐに離婚する相手など知る必要もないと思っていた。



だが、ベアトリスとの会話は可笑しく楽しくて、度々みぞおちをゾクッとさせてくれる。

月明かりの下で魔王城までの道を歩みながら、ジンは彼女の手から伝わる温かさに高揚してしまう。



「ベアトリス」

「はい」

「君に私の部屋を教えよう」

「いいのですか?」

「ああ、仲良く話したくなったら来ると良い。夜はその部屋で休むようにしている」



手を繋いだベアトリスは驚きに愛らしく頬を染めて、アイニャにだけ向ける無垢な笑顔をジンに魅せた。



「ありがとうございます!魔王様!」



初めて見たベアトリスの自然な笑顔に、ジンのみぞおちがまたゾクッと縮んだ。ジンは反応をした胃に手の平をあててその違和感を握りしめた。



(その愛らしい笑顔をもっと見てみたい)



ジンの脳裏に淡い想いが湧いたと同時に。



(誰も泣かせない私の妻を、私こそが泣かせたい)



そんな好奇心がジンを満たしてしまった。