耳の先を赤くした幼い妻の誘いに、ジンは思わず口角が上がる。

至極、興味を惹かれるお誘いだった。



「人間と、魔王で、仲良くかい?」

「そうです!」

「泣かない宣言と言い、君は突飛なことを言うのが好きなようだね」



ジンは立ち上がって、地面にペタンと座ったままのベアトリスに右手を差し出した。すらりと指先が長い。


ベアトリスは恐る恐る差し出された手に柔らかい己の手を重ねた。魔王の肌は冷たかった。



「仲良く、とは。どの程度かな?」



重なった手をジンがぐいっと引き寄せると、あまりの力にベアトリスはすっと立ち上がらされた。その勢いのままジンの胸に追突してしまう。



「抱きしめて欲しいってことでいいかい?」

「ち、違いますわ!勢い余っただけです!私は痴女ではありませんことよ!」



ジンの胸を押し返して、ベアトリスは真っ赤な顔で抗議した。男性と触れあったことのないベアトリスは、ジンの冷たい手の平や固い胸を知って緊張のあまりに目に涙の潤々が溜まって来た。



「へぇ」



ジンはそのクリスタルブルーの瞳が潤むのを目撃して、ついニヤけてしまう。ベアトリスの顔に顔を近づけてまじまじとその瞳を覗き込んだ。