ベアトリスは魔国にて与えられた自室、もとい石壁の牢獄小部屋に戻り赤いウエディングドレスを脱ぎ捨てた。


生贄姫条約により部屋を与えることを義務付けられてはいる。だが、人間国から嫁がされた生贄姫の扱いなんて奴隷と同じだ。


石造りの小さな貧相な部屋に木のベッドが一つあるだけ。あとは何もない。


魔王様の前に出るからと用意されたウエディングドレスだけが煌びやかで、この石造り牢獄小部屋にはまるで似合わない。


だがベアトリスはこの部屋で生きようと決めていた。



人間国に帰ったなら、

ベアトリスは「チビデブハゲ糞エロ変態伯爵」の奴隷嫁になる運命だ。



(魔国はある意味、究極の逃げ場だわ。あの人たちの権力がまるで届かない異国ですもの)



訳アリな育ちをしているベアトリスには義理の姉がいた。そもそもかなり逆恨みされていたのだが、ひょんなことから呪われるほどさらに恨まれた。



復讐心を込めて魔王様の生贄姫に推薦され、

帰ったらチビデブハゲ糞エロ変態伯爵の嫁にしてやる!

と呪いの大エールを受け、ベアトリスは魔国に嫁いできた。



人間国で気持ち悪い頂点の男の性奴隷嫁になるくらいなら、

見知らぬ魔国の貧相なこの部屋で静かに暮らしたい。



ベアトリスは絶対に人間国に帰らない決意をしていた。