ジンの尖った大きな耳がピクリと動いて、真っ赤な瞳が見開いた。



「私に?どうしてだい?」

「その……もう少しお話してみたくて。その、その」



もじもじと口が回らないベアトリスを前に、ジンはクスクス嬉しそうに笑った。



「私の幼な妻は口が立つと噂では聞いていたが、実際は違うようだね」

「口喧嘩は得意なのですが。こ、こういうことを言うのは初めてなので、どう言っていいかわかりませんわ」



ジンはソワソワと視線を逸らしては、また見つめてくる彼女から目が離せなかった。



ジン今までの生贄姫とは口をきいたこともない。


だが、金髪の豊かな波髪を揺らして頬を染めていじらしく言葉を紡ごうとするベアトリスの姿は、ジンにとって心地が良いものだった。尖った耳が自然とピクピク動いた。


彼女の小さな口が意を決した。



「あの!せっかく夫婦になったのですから!」



幼な妻の次の言葉が待ち遠しくてジンのみぞおちがゾクゾクした。



「私たち、もう少し、仲良くなるのはいかがでしょうか?」