今日もアイニャを布袋に引っ提げたベアトリスは、できる限りの美しさを整えて魔王城内を歩き回っていた。


「どうやったら、死んでもらえるのかねぇ。考えるのも楽しいねぇ」


通りすがりに呪いを言い残すワニおじさんは今日も通常運転だ。ベアトリスは屈強なくせに陰湿なワニおじさんを素通りする。


(どこに行けば魔王様に会えるのかしら)


魔王ジンともう少し話をしてみたいと思ったのだけれど、ジンに会える場所がベアトリスにはわからなかった。


城内の魔国民たちにジンの居場所を聞き回ってみたが、口喧嘩でコテンパンにのして回っていたベアトリスに親切に教えてくれる者などいなかった。


死ね!のシンプルな罵倒が返ってくるだけである。


「すっかり嫌われてしまってるわね。やられたからやり返しただけなのだけれど」


何週間か前にジンと偶然出会えた湖のほとりで、ベアトリスはアイニャが狩りから帰ってくるのを待っていた。


小石をぽいぽいと何気なく湖に放り投げていると、いつの間にか隣に、うさ耳メイド、エリアーナがふよふよ浮かんでいる。


「わ!ご、ごきげんよう、エリアーナ様」

「アンタ、魔王様に会いたいらしいやん?」


ふふんと自慢げに鼻を膨らませるエリアーナの顔が厭らしさに満ちている。何か悪だくみを考えているのが全部顔に出ていた。


「うちが魔王様のところに案内したろか?」