魔王城内にあるサイラスの私室に、うさ耳メイドのエリアーナが訪れている。


椅子に座ってもてなされているエリアーナはうさ耳をぴょこぴょこ揺らして、喚き散らしていた。


「もう先生、なんでなん!」


赤ん坊のように喚き散らす可愛い可愛いエリアーナに、サイラスはうっとり目を細める。


子どもの顔した年増サイラスはジンの側近を務め、医師としての地位もあり、魔術に関する研究も嗜む一方、さらに様々な場所で教鞭をとってきたという経歴の持ち主だ。


平たく言えば、魔族の中でも有名な賢者である。



魔国民全員が教え子とも呼べる弟子の中の一人がエリアーナだ。ちなみに、魔王ジンも当然弟子の一人である。


「なんであの女は泣きもせぇへん!帰りもせん!」



テーブルを囲んで座れば、大人の女性が男の子に泣きついている図である。

だが、サイラスがエリアーナの才能を見出し特別に可愛がったために、エリアーナは先生と慕っていた。



「エリアーナは、あの人間を泣かせようと誰よりがんばってる」

「そうやねん!先生だけやわかってくれんのは!」



魔族は能力の偏りが異常に大きい種族だ。一万人の魔国民の中に、一人の驚異的な天才が生まれる一方、その他は力に秀でる脳筋のみ。


賢い奴だけが賢く、

あとはどこまでもアホ。

これが魔族の現実だ。