次の日、ベアトリスは新しい着替えの服と、魔王城内にある浴室の利用許可証を、うさ耳メイドのエリアーナから全力で投げつけられた。


「なんで優しいすんねん魔王様!泣かすんちゃうんかぁーい!!」


エリアーナは魔王の指示に荒れ狂っていたが、加護があるので痛くも痒くもなかった。声量が大きいので若干うるさいだけだ。


石造りの牢獄小部屋で暴れるエリアーナにアイニャが跳びかかっている。


「ニャ!」

「なんや使い魔のくせに生意気やなぁ!封印すんで?!」

「ニャ」

「え、ネズミくれんの?優しいやん。今度一緒に狩りする?ええ場所あんで?」


うさ耳メイドと黒猫の動物同士のやり取りの横で、ベアトリスはジンからの書状を読んだ。


『奥様に風呂を使う許可を出す。今後は他の者に裸体を晒さぬように』

(……びっくりするほどお優しいわ)


昨夜のジンの様子や、この書状を見てベアトリスは金色の波髪を揺らして考えた。


(もしかして、魔王様ともう少し仲良くできる可能性ってあるのかしら?

いやまさか、そんなこと)