魔王執務室にて、大仰な執務椅子にもたれて足を執務机に投げ出したジンは天を仰いでいた。


「あぁあああーーーベアトリスを抱きたいんだよッ!」

「弟子の下の事情など聞きたくもない」


サイラスはパチンパチンと指を鳴らし、あっちこち執務室中を飛び回る書類を分類している。

ジンは目を両腕で隠していると、毎晩一緒のベッドで眠るようになったベアトリスへの愛しさを思い出しては悶えてしまう。


ジンが魔王の矜持として、まだ手を出さないと知っているベアトリスは寝衣から覗く胸も細い足も無防備で、ジンに身体を擦りつけてクークー眠るのだ。


ベアトリスが妻になり1年ほどはたった。


だが、まだまだ魔族のキッス範囲にも程遠いのがジンの500年生きて来て、こびりついた超個人的見解だ。



「サイラスはエリアーナのこと抱きたくならないのかい?気が長いからね、長寿族は」

「ハァ、愚問だ。抱いたに決まってる」

「はぁ?!」