さすがのエリアーナでさえも期待外れでガックリ四つん這いだ。


吸引と力の溜まる音が鳴り、カオスの口から火球が繰り出された。両目の潰れたカオスには照準がない。ジンがいるだろう気配へ向かって放っている。


ジンはカオスの前に立ちふさがって傷んだ右手を庇い、左手で脅威を消し去った。左手の平も無事ではなく、焼け爛れて黒ずみ蒸気を上げている。


「チッ」


ジンが手の平を振るって舌打ちした。カオスは同じ攻撃ばかりだ。だがその不屈のアホ精神と、どこまでも続ける無尽蔵の体力に、先にこっちがジリジリ削られていく。


持久戦になればカオスに軍配が上がってしまう。


カオスは身体を魔術陣から抜け出そうと暴れ続け、火球を連射し始めた。

魔王城に一発でも当てられるわけにいかないジンは、カオスの前に浮き留まり防衛に専念する。連射される火球を焼け爛れた両手でいなす。


カオスから一切目を離さないまま、ジンは詠唱を続ける地上のサイラスを呼ぶ。


「サイラス、封印は諦める。私が首を狩ろう」


サイラスは少し顔を上げてジンを見た。詠唱を続けつつ首を縦に振る。


封印できない以上、殺すしかない。




「マジで?!そんなんアリなん?!できんの?!」