「エリアーナの報告を聞こうか?」


足を組んだままのジンが、さらりと流れた黒髪をまた尖った耳にかけ直す。子どもの顔した年増のサイラスが流暢に報告をした。


「想定外に初代魔王様の加護範囲が広くて、肉体的には全くダメージを与えられない」

「初代魔王様の加護の正体は、解明されていないからね。でも精神的なやりようはあるだろう?か弱い人間だ」

「汚い住処に食事なしに罵倒の嵐、どれも平気だ。

新しい生贄姫の強精神は評価に値する」


サイラスはエリアーナに下品って言われたぁ!と泣きつかれた件をジンにも報告した。サイラスから聞く幼な妻の無双話に、ジンは大笑いしたのだった。


「私の妻は思ったよりやるじゃないか」

「やはり物理的な痛みを与えられないとなると、口喧嘩になる。魔国民は頭が弱いからな。エリアーナ筆頭に」

「新しい妻は口が強くて気も強い。おまけに顔も可愛い」

「は?可愛い?」


ジンが尖った耳をぴくぴく揺らしてクスクス笑いを収めきれないまま、サイラスを真っ赤な瞳で見る。


サイラスは魔族にもなかなかいない珍獣を見る目でジンを見て三歩後ずさった。