「やれることは全部やって、奇跡を期待するしかない」

「先生ってそんな行き当たりばったりなことあんの?!」

「もちろんだ。長く生きれば生きるほどそういう肝は据わる」

「うっそやぁ!」


エリアーナは全力で詠唱を省略化してカオスの上でぴょんぴょん飛び跳ねて手を打った。まるで舞っているようだ。


魔力の流れを完璧にこなせるなら口での面倒な詠唱をカットできる。


この窮地で封印能力が研ぎ澄まされて磨きがかかるエリアーナの様を見て、サイラスはうっとりしてしまった。


エリアーナは日に日に成長していく。


変わっていくからこそ、彼女はサイラスの心をつかんで離さない。



「エリアーナ、もし生きて帰れたら」

「それ死ぬ奴が言うセリフナンバーワンやで!あかんって先生!」

「結婚しよう」

「えぇええ?!!」



エリアーナはパンパン手を鳴らして、サイラスはパチンパチンと指を鳴らし、封印作業を全く滞らせることなくプロポーズである。賢者もナイス心意気だ。



「僕のこと、好きじゃない?」

「そんなん大好きに決まってんやん!でもうちは魔王様が!」

「じゃあ、助けて欲しいとき呼んだのは


ジンだった?」



エリアーナは拉致された時に一切ジンの名を呼ばなかった。ジンに助けて欲しいなんて微塵も思わなかった。


心で何度も何度も語り掛けたのはサイラスだけだ。みんな大好き魔王様への恋なんて、みんなが通る憧れの通り道なだけ。


エリアーナの心なんて、気づかなかっただけで、すっかりサイラスのものだった。



「もう僕でいいでしょ?」