カオスの頭上、ぷるんの障壁の上に立ったエリアーナはパンと両手を叩き、封印詠唱を開始した。



「イくでぇ!アァ!この瞬間はいつもたまらんわ!」



時間との勝負だとサイラスに言いつけられた。エリアーナは持てる技術の限りを繊細に使いこなして詠唱を省略していく。詠唱は順調だ。



だが、エリアーナには不安があった。



サイラスはカオスの足元で、封印魔術の文様を円陣に書きこみ、魔術陣を錬成している。


(封印詠唱中のエリアーナは至高)


サイラスは黄緑色の目を見開いて集中しているだけだが、カオスの足元には淀みなく七色の文様が現れている。


サイラスが生成するこの魔術陣の中にカオスを沈み込ませて封印する。


サイラスとエリアーナ二人がかりで時間も省く仕様だ。


封印詠唱省略を続けるエリアーナは、カオスの頭上から足元にいるサイラスに不安をぶつけた。


「先生!カオスの特別封印詠唱は108番までやで!

うち100番までしかいかれへん!」


伝説級の魔族に対しては過去の賢人がつくった108番までの封印詩歌がある。


全てを諳んじ、魔力をきちんと乗せて操作することで封印は完了する。



番数が上がれば上がるほど高等技術だ。


サイラスは封印魔術陣の文様を見つめて、クスリと笑った。