「ぷるん様、加護を伝って私の声を魔王城内全員に伝えることはできますか?」

「ぷるん!」


加護は全員の身体に密着している。ぷるんの身体を通して全員に声を届けることは可能だった。ベアトリスは新たな発想で加護を使いこなし始める。



(魔王様、私に加護を)



ベアトリスは大きく息を吐いて、威厳を持って大声を出した。




「全員!お黙りなさい!!」




ベアトリスの声が耳を劈くと、魔王城内にいる魔国民全員が地に片膝をついて頭を垂れた。


まるで魔王にそうするかのように。


ベアトリスがジンからもらった加護「魔国民への命令権」を発動したのだ。


そんなものを使うことはないと思っていたが、勢いよく自殺しようとする彼らに使うしかなくなった。


「どうして動けないの」

「くぅ!!」


体の自由が利かないらしい魔国民たちに、ベアトリスが堂々と、おごそかに約束を告げた。



「あなた方がいくら私を嫌いでも、

私はあなた方を守ります。




私は魔国の、王妃ですから」




力で抑えつけられた魔国民に、やっとベアトリスの声が届いた。魔国民たちがベアトリスの言葉を信じられない思いで聞いてしばし止まったその時。


静寂に包まれていた魔王城に、大きな地響きが伝った。



「ぷるーん!」



魔王城の真ん前に、魔王城と同程度に大きなカオスが飛来した。魔王城を加護しているぷるんの身体にカオスが噛みつく。


危機に瀕した魔国民たちは、息を飲み奇妙に静かだった。



明確な死を目前に硬直していた。



魔国民たちはあんぐりと開かれた巨大なカオスの口の中を、ぷるんの身体を通して真正面から見つめることになった。


あの口の中に入ったらどうなるか。背筋が凍る。