的確な指示を飛ばしていたジンにベアトリスが問うと、ジンは頷いた。


「おそらく犯人は魔族崇拝主義の者だ。

動機は魔国の大部分を破壊することになっても

『人間を殺したい』だろう」


ベアトリスは再び両手で口を覆った。


「私が君に直接危害を加えることを禁じたから、封印された驚異を解放して君をもまとめて葬る策だ。悪知恵がある」


魔国全土を破壊するような魔物の封印を解いてはいけない。などとイチイチ魔王様は命令したりしない。


そんなもの不文律だ。魔王様に逆らってませんという理屈を通す気だ。


「嫌われ者で、誰からも認められていませんからね、私は」

「だが、私の認めた王妃だ」


燻ぶっていた「弱い人間王妃を認めない」問題がついに実害として動き出してしまった。

ベアトリスが強い王妃として認められたいという努力は間に合わなかった。ジンはベアトリスの頭を撫でる。


「君は悪くない。収めきれなかった私の力不足だよ」


ジンは生贄姫をなぜ早く人間国に帰さないのかと方々から言い立てられていた。


滑らかに流してきたが、当初から一貫した強烈な態度でベアトリスを認めないと主張していたのは、通称ワニおじさん。


おそらくエリアーナ誘拐犯はフェルゼンだ。