ジンの寝室にて、ベアトリスとジンは夜の生き血ジュース茶会に勤しんでいた。


日課になっている一日の報告会で、一時ではあるがぷるんの姿を消して夫婦二人きりの時間を満喫するのがジンの楽しみだった。


「頂いた加護の『魔王の命令権』ってどうやって使うものですの?」

「簡単だよ。命令権を発動するの腹の中で念じて、口に出すだけさ。効果は声が聞こえる範囲だけだけどね」


ジンが加護を与えたベアトリスはますます可愛いを更新していた。加護を与えたことでますます自分の一部になったような感覚がある。


幼い妻の手を愛でて顔を愛でて、髪を撫でる。


ジンの話に頷く仕草さえ全部食べてしまいたい衝動を飼いならしていると


突然、寝室の扉が吹っ飛んだ。


「キャア!」

「ぷるん!」


ぷるんが即座にベアトリスを体に取り込んで、扉の破片を跳ね返す。ジンもベアトリスを背に庇った。


襲撃の埃の向こうで気配を隠すどころか威嚇殺戮オーラを存分にまき散らす相手に、ジンは声を張り上げた。



「サイラス!どういうつもりだい?!深夜だよ!?」

「エリアーナはどこだ」



黄緑色の眼に殺意を色濃く灯してギラつき、地を這う声を出すサイラスに、魔王夫婦は二人で共鳴して手を握り合った。



((賢者、怖ぁああ!!))