サイラスは大ため息で肩を竦めた。


「気性が大人しく従順で生贄姫と相性もいい。使える加護様だ」


ベアトリスが連れて来た加護の具現、ぷるんの性能は文句の付け所がなかった。ベアトリスの指示に従って加護範囲を取り込んで守ってくれる。


ぷるんの加護で裏庭を覆えば、ベアトリスが拒否したパクンだけを裏庭から追い出すことができた。



初代魔王様の力の一部を受け継ぐぷるんは、言語能力を失することで能力を上げていた。


言語を話さないところもペット的でベアトリスのツボだった。二人は終始いちゃいちゃしていて、ジンはご機嫌斜めなのだ。



「だが、そんな嫉妬を見せびらかすほど子どもではない」

「それは安心した」


サイラスにはグチグチといちゃいちゃするなと言うものの、ジンはベアトリスの前でそれを大々的に押し付けるようなことは、まだ、していない。


年上旦那様の矜持である。ベアトリスがぷるんと戯れていている姿は至高の可愛さを与えてくれる。だが、ぷるんぷるんする相手が自分でないことがジンは複雑だった。



「私もベアトリスに加護を与えたい」



嫉妬に狂っておかしなことを言い始めるジンが心底どうでもよくて、サイラスは自分の用事を切り出した。付き合ってられない。


「勝手にしろ。それよりコレについて聞きたい。お前の執務机に入っていたこれは何だ」


サイラスが持ち出した小瓶には、煌く液体がたっぷり入っていた。

ジンは考え事を止めて、サイラスを見てふっと笑った。


「私の机を勝手に漁るなんて酷いな」

「こんな強い魔力が僕の目に止まらないはずないだろ」

「まあ、そうだね。何だと思う?」


液体の入った小瓶を光にかざして、サイラスが呟く。


「生贄姫の涙か」

「正解」


ジン赤い瞳が細まり、にやりと笑う。