ジンのクスッと笑いにからかいが乗っていたのをベアトリスは聞き逃さなかった。このちょっと意地悪しがちな旦那様はベアトリスを泣かすのが大好きなのだ。


ベアトリスは身体を持ち上げて潤みに潤んだ瞳で、今まで背中に跨っていたジンを睨んだ。



「わ、わざと厭らしい声が出るように意地悪しましたわね!魔王様!」

「バレたかい?この前、君にされた悪戯が悔しくて仕返ししてしまった」



ジンはベアトリスが尖った耳に囁き、思わず赤面してしまったことを根に持っていたらしい。ベアトリスが超年上旦那様に悪戯などやってはいけないことだったのだ。


「酷いですわ!こんなに恥ずかしい想いをさせるなんて!」

「私が触れると泣いてしまう君が大好きなんだ。君を泣かせていいのは私だけだからね」

「もう!お話になってませんわ!」


ベアトリスがベッドに座り込んで、ジンの胸をぽかぽか殴るとジンが愉快に笑った。ベアトリスの目尻に浮かぶ涙をジンが指で掬う。雫のついた指先をジンはぺろりと赤い舌で舐めとった。


「美味しいよ、ベアトリス。もっと優しくして泣かせたくなるくらいにね」


ジンが真っ赤な瞳を細めて舌なめずりする仕草は淫猥だった。

ベアトリスはますます頬を染めた。両手で顔を覆ってしまうほど、魔王様の魅力が突き刺さって息が苦しかった。


「こ……降参いたします。もう悪戯などいたしませんわ」

「それは良かった。君に煽られると私が先に降参してしまうからね」


にこやかに微笑むジンに頭をわしわし撫でられて、ベアトリスは調子に乗った悪戯をきちんと反省した。


「私を誘惑するのはほどほどにしてくれ」


超年上旦那様はキスはしない。だが、絶妙にラインを犯さないえっちな仕返しは倍返しどころでは済まないのだった。