サイラスがベアトリスの指にはまった古臭い指輪を指さした。その指輪はベアトリスとジンの両方が離婚に合意しない限り外れない。


つまりもう、死ぬまで外れることがない。



「初代魔王様の加護を使って戦えということでしょうか?!いぎゃあー!食べられちゃう!」



サイラスは頷いて、ベアトリスの断末魔にケラケラ腹の底から可笑しそうに笑った。


サイラスの笑い声など初めて聞いたが、子どもの狂気染みた笑い声はとても気味が悪い。可愛さの欠片もなかった。


ベアトリスがぎゃあぎゃあ叫んで、サイラスがケラケラ楽しそうに笑う裏庭をジットリとうさ耳エリアーナが睨んでいた。


「謝ろうかと思ったのに、なんなん!先生はうちの先生やのに!」


エリアーナが唇を噛みしめてズカズカと裏庭に乗り込んできた。サイラスがエリアーナの登場に即反応して立ち上がる。


「きゃあああ!!」


ベアトリスはエリアーナに気づくことなくパクンに頭上をパクパクされていた。


「エリアーナ、こんな場所に来てどうした?まさか使い魔のこと謝りに?」


エリアーナはサイラスを素通りして両手を合わせてパンと鳴らした。


「違ったみたいだな」