500年以上生きているジンは、まだまだ幼く初心い妻のもじもじにみぞおちがゾクゾクしてしまう。ジンは尖った耳がピクリと動くのを無視して、ベアトリスに片手を差し出した。


「こちらへおいで」

「はい、魔王様」


ジンは手を重ねたベアトリスを引き寄せて、軽々と膝の上に横抱きに乗せた。ベアトリスは両手で顔を覆って羞恥を耐える。


「ち、近いですわ、恥ずかしいですわ、美しいですわ魔王様!」


ベアトリスが思わず取り乱すと、ジンに顔を隠した両手を掴んで持ち上げられる。上気した顔を露わになると、ジンがじっと見つめていた。


「恥ずかしがるのはかまわないけど、愛らしい顔を隠さないでくれないか」

「だって耐え難いですわ!」

「私に触れると、すぐ目を潤ませるところが見たいんだ」

「悪趣味ですわよ魔王様!」

「良い褒め言葉だ」


ベアトリスがついつい悪態をつくと、ジンがクスクス笑う。幼な妻の悪態などふわふわの枕くらいの感触だ。ジンの細くて冷たい指先がベアトリスの頬を添う。



「君の潤んだ瞳、私にだけ見せてくれる泣き顔が好きなんだ」