すっかり深夜。風呂上りのベアトリスはジンの寝室を訪れた。ジンに夜に部屋に来るように言われたのだ。


(私たちって新婚ですわよね……そういうその、初夜ってその、いつあるのかしら)


お風呂で身を清めたばかりのベアトリスは悶々と考えていた。ジンに愛を伝えられて、王妃に請われ、ベアトリスは快諾した。


『結婚の儀を交わしたんだ。全てに合意のはずだが?』


いつかのジンの台詞がベアトリスの脳内をぐるぐる回っている。火照った顔でジンの寝室に入室すると、ベッドの端にジンが腰かけていた。


「よく来たね。待っていたよ」


かっちりした魔王様の上着を脱いで、ラフなシャツ一枚のジンは無防備だ。そんな姿をベアトリスに見せてくれることに胃がソワソワしてしまう。


ベアトリスがどこに腰をかけるべきかもじもじしていると、ジンの真っ赤な瞳が幼い妻を捕える。


「そんなところで突っ立ってどうかしたのかい?」

「どこに座るべきかと思いまして」