嫌々な講義を終わらせたサイラスは、魔王城内をてくてく短い足で歩き回っていた。考え事は歩きながらが良い。


魔王城内には様々な魔国民が身を寄せている。


魔狼のような野生型から逃げたい弱い理性型や、絶滅寸前の希少種族、治癒のない魔国においてサイラスの医術を頼ってきたもの、魔王に相談事があるもの。


魔王城は魔国民の駆け込み集合住宅のようなものだ。さっそくドクロ族のカップルがケンカをしている。



「てめぇ!俺の分の骨を食っただろう!」

「知らないわよ!アンタが食べたのは自分の骨じゃないの?!」

「自分の骨食う奴がいるかぁ!って骨一本足りないんだけど?てめぇ、俺の骨食っただろう!」

「知らないわよ!」



低能ないさかいの横を通り過ぎるサイラスは、指をパチンと鳴らして魔術でドクロカップルを壁に貼り付けて歩いていく。


魔国民はアホなのでしばらく壁に貼り付けておけば、喧嘩は自然と終わる。



(アホ可愛い魔族に比べると、あの生贄姫……いや細胞は思ったより優秀だ。


魔族には知者が足りないからな)



細胞、細胞とベアトリスという人間を拒否したいサイラスである。だが、賢者であるがゆえにその能力の高さを公平に評価してしまっていた。


魔王城を歩き回ればすぐに低能な喧嘩にぶちあたる。


サイラスは指をパチンパチン鳴らして魔族たちを壁に貼り付けつつ、魔王城を歩き回ってパトロールする。手のかかる子ほど可愛いがる体質のサイラスの趣味だ。