天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

「私は、このまま働きたいと思っています。仕事と子育ての両立は決してたやすくはないと承知していますが、情報官の仕事は私の生きがいなので諦められません」

 松本で働く最後の日、やっぱりこの仕事が好きだと強く感じたあの瞬間を思い出す。

「ずっとこの世界にいたいと思わせてくれたのは、他の誰でもない暁月さんです」

 自然に口元を緩めてそう言った私を、暁月さんは少し驚いたような目で見つめた。

 数秒後、静かに聞いていたお父様がひとつ息を吐き、「……そうか」と頷く。

「ふたりがそう決めたならやってみるといい。ただ、ふたりとも一般的な職業とは違う。働きながらの生活はそんなに生易しくはないと覚悟しておきなさい」

 厳しい声色ではあるものの、わりと反対はされなかったので、私たちはとりあえず安堵してそれぞれ返事を返した。


 それからは主に仕事の話をして、比較的和やかに食事を終えた。お父様と別れて車に戻ると、一気に気が抜けて助手席のシートにもたれる。

「とりあえず認めてもらえたみたいだな」
「はい、よかったです。緊張した……」

 大きく息を吐く私の隣で、暁月さんはふっと笑みをこぼしてエンジンをかける。