天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

「降旗さんは情報官だそうだね。今はどこで働いているんだ?」
「四月から東京空港事務所に異動してきました。その前は、松本空港で二年間ほどレディオ業務を」
「松本空港か。あそこは景色が綺麗でいい場所だ」

 松本空港を知っていて褒めてもらえたことと、お父様の表情が少し穏やかになったのも嬉しくて、私は一気に頬が緩む。

「ありがとうございます。ご利用されたことがあるんですね」
「昔、からの便が就航していた頃に何回か利用したよ。残雪のアルプスが見事だった」

 彼は懐かしむように目を細め、お猪口に口をつけた。やっぱりお父様も空が好きなんじゃないだろうかと、漠然と感じる。

 話が合って嬉しいのだが、私は少々後ろめたい気持ちになる。

「恥ずかしながら、私は実際に空からあの地域を見たことがないんです。よく映像では見るので、美しいのはわかっているのですが」

 実は、飛行機に乗るために松本空港を利用したことがないのだ。どこへ行くにも車か電車が主だから、皆が言う絶景はいまだに実際には見られていない。

 暁月さんも意外そうにこちらに目を向ける。