天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 挨拶をし終わったタイミングで、黒い長皿に品よく盛りつけられた前菜が運ばれてくる。食事をし始めてから、お父様が「暁月」と切り出した。

「結婚したいそうだな。陽和も言っていたが、暁月にそんな女性がいるとは驚いたよ」

 さっそく本題に入り、私はあまり食材の味を感じられないままごくりと飲み込んだ。

 暁月さんは食事する手を止め、ほんの少し考えを巡らせてからゆっくり口を開く。

「最初は、パイロット思いの彼女の仕事ぶりに惹かれたんだ。話すようになってからは、その内面も素敵だとわかった。まだそんなに長い時間を過ごしたわけじゃないが、俺には莉真しかいないと思っている」

 言葉の最後で私を一瞥した彼と目が合い、心臓が飛び跳ねた。

 ……いけない、危うく本心だと勘違いするところだった。お父様に納得してもらうための上辺のセリフにすぎないのに、声にも瞳にも誠実さを感じたものだから。

 暁月さんって役者にもなれるんじゃないだろうか。少なくとも私は男性にこんな風に言われた経験がないので、演技だとしても今かなりドキドキしている。

 赤くなっているだろう顔を俯きかけたものの、「そうか」と短く返したお父様の目がこちらに向いたので、慌てて姿勢を正す。