天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 丁重にお断りしようとしたものの、そんな返事がきて私は口をつぐんだ。彼の瞳は至極真剣で、からかっているようには見えない。

「一緒に生活していくうちに愛が芽生える可能性はあるし、俺は君とそうなれたらと思ってる」

 心拍数がみるみる上がっていく。どうやらこれは、ただの契約結婚とは少し違うらしい。愛育婚とでも名づければいいだろうか。

 相良さんがそういう考えなら、ちゃんとした夫婦になれるかもしれない。一縷の希望が見え、心に光が差してきた。

 が、そこで再びストップがかかる。冷静に考えて彼の妻になるのは荷が重すぎるだろう。私なんかよりもっと相応しい人がいるに違いないのに。

「いや、でも……相良さんのお相手が私でいいとは思えないんですが」
「『結婚しましょう』って最初に言ったのは君なのに」
「あれはプロポーズじゃないですってば!」

 慌てて訂正する私にいたずらっぽく笑った彼は、「ごめん、冗談」と言って続ける。

「君だからこそ、俺はこの提案をしているんだよ。あの日、一緒に雪景色を見ていて感じたんだ。ふたりきりなのも悪くないなって」

 穏やかな表情で口にされた言葉に、胸がトクンと鳴った。静かで真っ白な世界で感じた気持ちが蘇る。