天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

「会いたくなかったのに、今度は担当まで同じで毎日顔を合わせるハメになってしまって。困るんです、吹っ切れなさそうで。これじゃ仕事もしづらいし、精神的にしんどいし、どうしたらいいのか……」

 三日目でだいぶ疲れているのに、これがずっと続くのはきつい。先行き不安で、視程が悪い中で飛行しているパイロットさながらの心境だ。

 脱力してため息をつく私を横目で見ていた相良さんは、数秒思案してから切り出す。

「じゃあ、あいつが気にならなくなるように、もう一度してあげようか」
「え?」

 なにを?と首をかしげて振り向くと、夕焼けと夜空の狭間の色に変化した瞳に捉えられる。ミステリアスなそれは、彼が時々見せる〝男〟の表情。

「この間のキスだけじゃ足りなかったみたいだから」

 そのひと言で意味を理解し、心臓が音を立てると同時に目を見開いた。

 彼は片方の手を手すりにかけたまま、もう片方の手で私の髪を優しく掻き上げる。その手が顎へと滑り、顔を少し持ち上げて距離を詰めてくる。

 嘘、ちょっと待って、どうしよう。このまま受け入れていいの!?

 近づく端整な顔に焦りながらも、もう一度キスをしたらなにかが変わるんじゃないかという、漠然とした期待みたいなものが湧いてくる。