天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 それに、今の口ぶりからすると城戸さんにもなにか事情があったようだが、今となってはどうでもいいこと。ぐっと手を握り、思い切って突っぱねる。

「今さらそんな風に言われても困ります。私はもう……好きじゃないので」
「俺は好きだよ、今も」

 甘い声に一瞬ドキッとしかけたものの、あまりにもさらっと返されたのですぐに目が据わる。

 この彼は、どうせ誰にでもこういう甘言を使っているのだ。惑わされてはいけないと、ビシッと告げる。

「そーいうとこ! もう信用してませんから」
「真剣なんだけどな」

 ずいっと顔を覗き込まれ、綺麗な顔が急に間近に迫ってくる。驚いて「だ、だから……!」と言いながら一歩足を引いた。

 その瞬間、誰かの腕が私の肩に回される。

「──見つけた」

 耳元で低く甘めな声が響いた。肩を抱くその人を見上げ、私は大きく目を見開く。

「さ、がらさん……!?」

 顔を合わせた瞬間、空港内の雑踏が消えた気がした。今日はパイロットの制服ではなくスーツ姿だけれど、それもひと目見ただけで意識を持っていかれそうな魅力を放っている。

「待ってたよ。君が来るのを」

 相良さんは長めの前髪がかかる目を柔らかく細めて微笑んだ。