天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む


 なんとか雑念を振り払い、リモート管制に早く慣れることだけに意識を向け、早くも三日が経った。

 仕事を終えた今、どっと疲れが押し寄せている。明日の休みは寝て過ごそうと目論みながら、羽田空港の第一ターミナル駅を目指して空港内を歩いている……のだが。

「ねえ莉真ちゃん、せっかく一緒に退勤したんだし夕飯おごらせてよ」

 私と歩幅を合わせて歩く城戸さんに食事に誘われ、残りの体力が余計に減ってきている。もうこれ以上頭を悩ませたくないので、笑みを作ってきっぱりと断る。

「すみません、疲れてるんで」
「疲れた時は美味しいご飯を食べるのが一番。歓迎会も兼ねてどう?」
「ならまた今度、添田さんと皆で行きましょうよ」

 いや、それよりまず大きな問題があるじゃないかと、足を止めてキッと彼を見上げる。

「ていうか、ふたりきりはダメに決まってるでしょう。城戸さんには奥様が──」
「もういないよ」

 間髪を容れずに返ってきたひと言に、私は口をつぐんで目を見開く。

「去年、離婚したから」

 城戸さんはやや冷たい表情できっぱりと打ち明けた。

 彼は以前から結婚指輪をしていなかったから、仕事中はつけない主義なのだろうと思っていた。予想していなかったこの事実には、さすがに動揺してしまう。