茜の言葉に笑いつつ共感していると、彼女は急に真面目な面持ちになり、テーブルに身を乗り出してくる。

「東京に行けば相良さんに会える可能性が今より断然高くなるんだから、しっかり仲を進展させるんだよ」

 力強く言われるも、私は複雑な気持ちになる。

 茜にだけは、相良さんにキスされたことを打ち明けた。彼女はずっと恋愛面で一歩を踏み出せなかった私を心配していたから、私たちが親密な仲になるのを期待しているのだ。

 相良さんが拠点にしているのは東京。こちらではほとんど会えなかったから、確かにこれから会いやすくはなる。

 でも連絡先も知らないし、そもそも彼は私に城戸さん以外の男性を意識させる方法を実践してみただけだ。

「いや、彼はそんな気はないだろうし、私だって……」
「初恋をこじらせてる厄介な女に、さらに面倒になるのわかっててキスまですると思う!?」
「ひどい言い様」

 私のことディスりすぎ……と口の端が引きつるけれど、茜の言うことは間違っていない。

 あの彼が見境なく誰にでもキスするような人だとはやっぱり思えない。かと言って、私に好意を抱いているとも思えないから悶々としているのだ。