天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 ということは、相良さんと交信するのはさっきが最後だったのか。もう一回やり取りできると思ったんだけどな……。

 伏し目がちになる私を、慰めるような笑みを浮かべた彼が覗き込む。

「そんなに寂しそうな顔するなよ。無線より、こうやって顔を見て直接話すほうがよくないか?」

 確かに直接話すに越したことはないのだが、空の上でも繋がっていると感じられるあの瞬間も好きなのだ。

 というか、寂しそうにしているのがバレバレだったのが恥ずかしくて、ふいっと目を逸らす。

「……それとこれとはまた別なんです」
「声フェチ?」
「そういうわけでは!」

 たわいのないやり取りでやっと自然に笑えた時、おそらく相良さんより年上の副操縦士の男性が「キャプテン!」と呼んだ。不具合で待機時間が伸びたとはいえ、お互いにのんびりはしていられない。

「すみません、お忙しいのに。失礼しまし──」

 慌てて頭を下げ、ターミナルビルに向かって足を踏み出した直後、ぐっと手首を掴まれた。

 驚いて振り返った先には、凛々しいパイロットの顔になった彼がいる。

「最後の管制、君の声で聞かせて」

 真剣さを感じる彼のひと言に、爽やかな風が吹き抜けたかのように胸の奥がざわめいた。