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約二カ月前の雪の日、私のファーストキスを奪った彼は、パイロットの姿で再会した途端に色気のある声で問いかける。
「あれから、俺のこと考えてた?」
今もキスの感覚がまざまざと蘇る唇をきゅっと結び、頬が火照るのを感じながら目を逸らした。
この人の思惑通り、強引に他の男性を意識させる方法は効果てきめんだった。あんなに城戸さんのことでいっぱいだったスペースに、相良さんがするりと入り込んできたのだから。
それは恋に落ちたわけではなく、ただ初めてキスをされたのが衝撃的だったからなのだろう。とはいえ、これまで城戸さん以外の男性について考えることはほとんどなかったからすごいことだ。
私は目を逸らしたまま、やや口を尖らせて答える。
「考えるに決まってますよ。は、初めて、だったんですから……」
あえて〝なにが〟とは言わなくても、相良さんはすぐ察したらしい。しかし、悪びれることもなく「大きな第一歩だな」と満足げにしている。
この人にとって、キスはたいして特別な行為じゃないんだろうか。結婚願望はなくても過去に彼女はいただろうし、なんか手練れな感じもするし、意外と遊んでいたりして……。



