相良さんは屈めていた体勢を少し戻し、親指で私の唇をそっと撫でる。
「唇、冷たい。もう中に戻りな」
優しい声色で言う彼の顔を、そばに来たタクシーのライトが明るく照らし出した。その表情は穏やかだが、危ういものを隠し持っているようにも見える。
彼は棒立ちになったままの私から離れ、「今日はありがとう。おやすみ」と声をかけてタクシーに乗り込んでいく。私はぎこちなく会釈して「おやすみなさい……!」と返すので精一杯だった。
ゆっくり走り去る車を見送りながら、今しがたのキスの感覚を蘇らせ、唇にそっと指を当てる。彼も言った通り冷たいのに、内側がじんじんと熱く感じる。
タクシーが来ていなかったら、きっと続きを受け入れていた。好きでもない人とキスなんてできるはずないと思っていたのに、嫌じゃなかった。それどころか、今も胸が高鳴って仕方ない。
「なんで? やばい……」
頑なに動かなかった心がぐらぐらし始めている自分も、好意があるわけでもないのに唇を奪えてしまう彼も、どうかしている。
寒さも気にならないほど動揺する私は、しばらくひとりで頭を抱えていた。
「唇、冷たい。もう中に戻りな」
優しい声色で言う彼の顔を、そばに来たタクシーのライトが明るく照らし出した。その表情は穏やかだが、危ういものを隠し持っているようにも見える。
彼は棒立ちになったままの私から離れ、「今日はありがとう。おやすみ」と声をかけてタクシーに乗り込んでいく。私はぎこちなく会釈して「おやすみなさい……!」と返すので精一杯だった。
ゆっくり走り去る車を見送りながら、今しがたのキスの感覚を蘇らせ、唇にそっと指を当てる。彼も言った通り冷たいのに、内側がじんじんと熱く感じる。
タクシーが来ていなかったら、きっと続きを受け入れていた。好きでもない人とキスなんてできるはずないと思っていたのに、嫌じゃなかった。それどころか、今も胸が高鳴って仕方ない。
「なんで? やばい……」
頑なに動かなかった心がぐらぐらし始めている自分も、好意があるわけでもないのに唇を奪えてしまう彼も、どうかしている。
寒さも気にならないほど動揺する私は、しばらくひとりで頭を抱えていた。



