天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

「…………え?」

 目を見開いたまま固まる私の口から、まぬけな声がこぼれた。目の前の彼は、まだ息がかかるくらいの距離で妖艶に微笑む。

「男を意識する方法は、こういうのもあるよ」

 ま、まさかのキス!?

 まったく予想もしなかった展開で唖然とする私に、相良さんは不敵に口角を上げる。

「君の頭の中、今俺のことでいっぱいになってるだろ」

 すべて見透かすような言い方。悔しいかなその通りで、どんどん顔が熱くなっていく。

 誰にも触れられていない唇が、まさかこんな形で奪われるなんて! 相良さんも好きじゃない相手とキスしていいの!? 確かに、今はあなたのことしか考えられなくなっているけど……!

 脳内パニック状態の私の頬に、彼のほんのり温かい手が添えられた。私を見つめ続ける瞳に再び危うい色香が漂い始め、鼓動が激しさを増す。

 流されてはいけないと思うのに、どうして身体は本気で拒否しようとしないのか。

「さ、相良さ──」

 二度目のキスを予感し、せめてもの抵抗で彼の胸に手を当てたその時、車の音とライトに気づいてはっとした。ふたりきりの世界から、現実に引き戻される。