天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 この辺りは街灯が少ないが、雪のおかげでほんのり明るい。芯から冷えるような寒さのおかげで酔いが一気に覚めていく。

「……静かだ」

 彼の口から、白い息と共にぽつりとひと言がこぼれた。私も、毎年冬になると同じことを思う。

「不思議なんですよ。田舎の夜はただでさえ静かなのに、雪が積もるといろんな音も吸収されたみたいに気にならなくなるんです。この世界に、自分しかいなくなったんじゃないかって思うくらい」

 車も人も通らず、ただ真っ白な雪に覆われた深夜の町。このしんと静まり返った別世界のような雰囲気も好きなので、辺りを見回して口元を緩めた。

 相良さんは私を一瞥し、柔らかな笑みを浮かべる。

「なんとなくわかる。今はこの世界にふたりきりだな」

 静かなせいか、自分の心臓の音がとても大きく鳴ったような気がした。

 確かに、今ここにいるのは私と相良さんだけ。でも、プライベートの彼との気を遣わない空気感も心地いい。だからこそ、今日は彼の意外な一面をかいま見たり、私も素をさらけ出せたりしたのだろう。

 ふたりでいるのも悪くないなと思い、自然に笑みがこぼれた。