天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 どうしてそこまで私を信頼してくれているのか謎だし、ブラックな部分を秘めているっぽい彼だから上辺だけの言葉かもしれない。だとしても、仕事で認めてもらえるのは単純に嬉しくて、喜びの笑みを隠せなかった。

 すると、賑やかな声が耳に入ってきて現実に引き戻される。ゴンさんたちが席に戻ってきたのだ。相良さんがすっと身体を離した時、私たちの距離がすごく近づいていたことを改めて実感して、今さらながら鼓動が弾む。

 彼の結婚に対する意識に変化が表れたのかはわからないが、私は話を聞いてもらえただけで心がすっきりしていた。


 飲み始めて二時間半ほど経った頃、そろそろ帰らないと明日に響くということでお開きになった。

 ゴンさんは遠野くんが車で送り、相良さんは市街地のほうのビジネスホテルに泊まるというのでタクシーを呼ぶ。私は自転車をシエラに置かせてもらい、両親と一緒に帰るつもりだ。

 支度を整え、両親に挨拶をして皆で店を出ると、辺りは三センチほど雪が積もっていた。

「気をつけて!」と声をかけて遠野くんの車を見送り、相良さんとふたりでタクシーを待つ。彼のスノボ用品一式はすでに宅配便で自宅に送ってあるらしく、ボストンバッグをひとつ持っているだけで身軽だ。