天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

「お父様の影響で、ひとりでは得られない幸せを逃すとしたら悔しくないですか? 素敵な家庭を作って、お父様を見返しちゃいましょうよ」

 あっけらかんと笑ってみせると、彼は〝そんな風に考えたことはなかった〟と言いたげな意外そうな顔をした。

 話しているうちにひとつの考えがひらめき、そのまま口にしてみる。

「夫婦関係って、私たちの仕事と似ている気がします」
「仕事と?」
「そう。情報官とパイロットみたいに、お互いを信頼し合って、同じ目的地に着くのを目標にして進んでいく。そういう関係になるんだと思えば、夫婦も悪くないでしょう」

 うまいことを言えた気がして、自画自賛したくなりつつ微笑んだ。

 真面目に私の話に耳を傾けていた相良さんも、ふっと口元を緩める。

「……じゃあ、俺たちは相性がいいかもね」

 そのひと言にドキリとして目を見張ると、彼はパイロットの時と同じ真摯な表情で言う。

「少なくとも仕事上では、俺は降旗さんを誰よりも信頼している。君とだったら、どんなフライトも完璧なものにできる気がする」

 思いがけずとびきりの褒め言葉をもらい、じわじわと胸が熱くなる。その熱が顔にまで広がってきて、「あ、ありがとうございます……」と縮こまってお礼を言った。