天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

「どうして夢なんて持てるんだ? 相手を縛るだけの契約に」

 彼は純粋に疑問を投げかけてきた。本当に結婚をわずらわしく思っているようなので、私も聞きたくなる。

「逆になんでそんなに拒絶するんです?」

 なにか理由があるのだろうかと質問返しをすると、相良さんは視線を宙に浮かべる。数秒考えを巡らせた後、「俺の父みたいに、誰かを束縛したくないから」と切り出し、ぽつりぽつりと話し始める。

「父は昔気質で厳格な人だったから、俺たち家族は自由に好きなことをさせてもらえなくてね。そんな生活に嫌気が差した母は男を作って出ていったし、決して幸せな家庭じゃなかったから、結婚にいいイメージが持てないんだ」

 昔話をするように語られたものの、内容は結構ヘビーなものだった。

 彼の瞳は、さっき一瞬かいま見えたのと同じ冷たい色をしている。名前の由来について濁したのも、ご両親の事情のせいなのかもしれない。

 きっと私には想像できないような苦労があったのだろう。両親の影響は大きいし、それで自分の価値観が変わるのもわかる。でも……。