天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 相良さんは「なるほどね、そういう事情か」と納得したように頷き、ウイスキーが入ったグラスをゆっくり動かしながら言う。

「君が彼を吹っ切れないのは、その恋を捨てたくないと心のどこかで思っているからなんじゃないか? 長い間大事にしていた恋だと、焼け焦げているとわかっていても捨てるのには勇気がいるだろうね」

 彼の言葉がすとんと胸に落ちてきて、確かにそうかもしれないと思わされる。忘れられないのは城戸さんのせいじゃなく、自分のせいなのだと。

「でも、それじゃきっと一生結婚できない。君も俺と同じだ」

 淡い琥珀の液体の中で氷がカランと音を立てると同時に、それを見下ろす彼が若干嘲るような調子で言った。

 ぴくりと反応した私は、じとっとした目で彼を見やる。

「同じじゃーありません。私はねぇ、まだ結婚に夢持ってんですから」

 完全に酔っ払いの口調で言い、残りの梅酒を飲み干した。ゴンさんの言った通り、なぜかケンカ腰になりつつあるな……。

 グラスをコンッと置く私を、相良さんは不可解だと言いたげな顔で見てくる。